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一月八日 [風]

一月八日の朝、黒い建具の表面に光の水玉が踊る。
刻々と水玉は大きさを変え、黒い紙の上に点滅する。
強い光、柔らかな光、か細き光の玉が入り乱れている。
その光の群れも、数分もしないうちに漆喰壁の白い壁面に移動していく。
木漏れ日からの水玉なのだが、この季節、儚く水玉の共演を見る時間がいとおしく感じられる。暮れから乾燥して紫の濃さを保つ野草と、枯葉の活けられたものの影がわずかに水玉を刺すように映っている。
冬の日の一瞬の情熱のような一齣。
一月八日.jpg
この町の鴫立川という川の畔に、鴫立庵という和歌と俳句で有名な草庵がある。この庵を西行法師のゆかりの地として開いた、大淀三千風という俳人が宝永四年の今日、故郷三重の地で没したという。1707年今から300年ほどの昔のこと。三千風は一昼夜で、三千の句を吟じたことからの俳号という。後に井原西鶴がこれを超え四千を超える句を吟じたという。二人とも己の頭の中の情報の全てを吐き出し句を並べたのだろうか。仙台に三千風が居を構えた頃、芭蕉が彼を訪ねたが、すでに仙台を離れて三千風に会えなかったという。言の葉という光の水玉を実らせた巨木の姿に、一粒づつの水玉が一句の輝きのように見えてきた真冬の朝でした。
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