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六月十日 [ネット]

ラオスのカム族の女性が作られたという、漁網編みの葛の繊維で作った巾着を眺めている。繊細なシャリ感のある8センチ四方くらいの巾着。蝉の羽のように透け、向こう側の世界が良く見える。今年の夏日本女性のストリートファッションは『透ける』ことがテーマだという。透けるスカートや透けるワンピースを軽快に身につけ、ボディのシルエットを仄かに見せる効果がいいのだという。日本の夏では、絽の着物という選択肢があった。透けた光のモアレ効果の中に中身が浮き上がり、絽の張りのある素材が、潔く涼しさを演出してくれた。京都の夏支度のしつらえでは、建具の格子や、簾戸が影を演出して美しい。

ラオスの葛の繊維で編んだショルダーバッグが、いつか民芸店で買った大皿に包装紙代わりに、このバッグに入れてくださったものがある。今ではこの葛のバッグのが大皿を買う値段より高いのではと、ふと思う。手で編む葛の糸を操る指先を思う。ラオスは遠いが、その美しいかたちが目の前にある幸せを思う。

人は編むという行為をどこから気づいたのだろう。それは長い自分の髪を束ねて交差させるうちに考えたのかもしれない。長い草木の蔓を束ねるうちに、自然の絡む植物の姿からヒントを得たのかもしれない。編むこと織ること綴ること、それが言葉を綴り出すようにまでなった人間とは面白い生き物だ。

画像はネットの構造と、カム族の巾着とショルダーバッグ。

ラオスの網.jpeg
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コメント 2

sig

漁網網み、いかにも丈夫そうですね。そして美しいですね。
人は 編む 織る 縫う というようなステップで着物や袋物を作ってきたのでしょうか。いずれにしても素晴らしい知恵ですね。
by sig (2015-06-10 21:01) 

斗夢

最近読んだ文章の中に
「変わりゆくものが変わらぬものの価値を呼び覚ます」
がありました。
前後も再読しようと元本を探したのですが、行方不明です。
by 斗夢 (2015-06-11 07:31) 

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