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6月16日 [人]

印象深い小説の、中身が脳裏を掠めた。
その小説に登場する男性は、彼が生まれた国の王様と同じ日に生まれた。
彼は青年になった頃、王様が国中を巡る行列が、彼の故郷にも来ることを知り群集と小旗を振った。
彼は成人を迎えた頃、貧しい故郷から出稼ぎに、都に出た。都は世界の人々が集まる運動の祭典の準備で、大わらわだった。

その大会は五輪大会と言った。大会の所為で都は栄えた。
彼は栄えた都の片隅で、一人で慎ましく暮らした。
家族の為に都に出てきたのだが、稼いだ金は家族の住む故郷に送り、気軽な都暮らしが彼を故郷から切り離しました。
彼は都でいつしか、ホームレスの群れに加わっていた。
栄えた都の、中心部の丘陵にある森の公園に彼のホームはあった。
見晴らしの良い森の一画には、王様が通う美術館があつた。
ある時、年老いた王様が黒塗りの乗用車で、森の美術館へ絵画鑑賞でやってきた。
その時だけは、都の警察が森の自由人達を森から追放した。追放される彼が、黒塗りの乗用車の一行と、すれ違うところで小説は終わった。

彼と王様と、同じ時間を共有し、同じ国に生まれ、別々の人生を生き、
彼等二人が交差する物語。

強烈だった。昨日都知事が辞職した。都知事と同じ生まれ年の私が、彼の人生と、自分の人生が土台となった同時代といういう世界を強く振り返らせた。

小説の彼は、FUKUSHIMAという地方の生まれで、彼が生まれた住所が、私の母の本籍地と一緒だったことも何か強い印象を残している小説だ。

数ヶ月前、店先のマッサージ機に気持ち良さそうに座る二人の男性を見かけた。目をつむり夢見心地の御二方が、脳裏に浮かべているものは何か。
何故かこちらも心地よい瞬間をこちらも頂いた。


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