1月13日 [光]
1月2日 [光]
十一月三十日 [光]
東京南青山の表参道付近の八百屋。なぜか山積みの果物や野菜の売り場に、梶井基次郎の作品「檸檬」を思い出した。裸電球の下並ぶ野菜を、十数年前に京都五条付近の八百屋に見たときも同じ思いを描いた。
色温度の低い赤みの電球の下の、檸檬が一つ置かれた様子は、鮮やかであるが後ろに闇を控えた店頭の姿に心揺さぶれたからなのだろうか。林檎の赤や、蜜柑のオレンジ色、果物を包む紙の透け感に、何か異次元の世界を感じ、「檸檬」という作品を思い浮かべたのだろうか。
京都と青山の光景に共通するのは、闇が店先を包んで、両隣の店の存在が見えない光景だった。それは舞台のステージの上の照明のように見えたのかもしれない。
芝居掛かった無人の果物やの店頭、小説の中の主人公が檸檬を一つだけ買ってコートのポケットに入れる。老舗書店の静まり返った積まれた書籍の上に、檸檬を一つ乗せる。
ガラス戸越しに車のヘドライトがあたり、檸檬色の仕掛けが浮かび上がる。
そんな光景をまた思い浮かべてしまった。
路地を曲がり暗い石段の上を小学生がステップを踏んで、ブティックの薄暗い照明の店内に消える。
青山の路地裏と、帽子にリボンがぶら下がった小学生のコントラスト。
昼間、東京丸善書店の洋書売り場で籠をぶら下げた三揃いのスーツを着た恰幅の良い紳士が、手当たり次第に洋書の厚いものを棚や平積みから持ち上げ、籠の中に放り投げるのを見た。何かその服装と、手荒な本を投げる行為が非常に下品に見えた。本が投げられ落下して立てる大きなドサッという音に、札束を投げる姿にも見え、何か不快な気持ちになった。
彼の背に思い切り、レモンを投げつけたい衝動になった。そのソフト帽の上にも檸檬を載せたい衝動が湧いた日だった。
その日の晩、ある写真家の方の朗読会があった。「写真を撮るのは何故ですか」と彼が十の何故と述べた中で、「写真を撮るということは、消えていくものだからです。」という強い言葉が印象に残った。
「世界は消えていくものだから」「消えていくものへは何かすべてが潜んでいるから」「そこに或るものは、消えていく」「だから写真に撮る」
夜の店頭に檸檬があったのか、よく見ないままに私は写真を撮っていた。
檸檬かじる少年路地へ冬の旅 無音
色温度の低い赤みの電球の下の、檸檬が一つ置かれた様子は、鮮やかであるが後ろに闇を控えた店頭の姿に心揺さぶれたからなのだろうか。林檎の赤や、蜜柑のオレンジ色、果物を包む紙の透け感に、何か異次元の世界を感じ、「檸檬」という作品を思い浮かべたのだろうか。
京都と青山の光景に共通するのは、闇が店先を包んで、両隣の店の存在が見えない光景だった。それは舞台のステージの上の照明のように見えたのかもしれない。
芝居掛かった無人の果物やの店頭、小説の中の主人公が檸檬を一つだけ買ってコートのポケットに入れる。老舗書店の静まり返った積まれた書籍の上に、檸檬を一つ乗せる。
ガラス戸越しに車のヘドライトがあたり、檸檬色の仕掛けが浮かび上がる。
そんな光景をまた思い浮かべてしまった。
路地を曲がり暗い石段の上を小学生がステップを踏んで、ブティックの薄暗い照明の店内に消える。
青山の路地裏と、帽子にリボンがぶら下がった小学生のコントラスト。
昼間、東京丸善書店の洋書売り場で籠をぶら下げた三揃いのスーツを着た恰幅の良い紳士が、手当たり次第に洋書の厚いものを棚や平積みから持ち上げ、籠の中に放り投げるのを見た。何かその服装と、手荒な本を投げる行為が非常に下品に見えた。本が投げられ落下して立てる大きなドサッという音に、札束を投げる姿にも見え、何か不快な気持ちになった。
彼の背に思い切り、レモンを投げつけたい衝動になった。そのソフト帽の上にも檸檬を載せたい衝動が湧いた日だった。
その日の晩、ある写真家の方の朗読会があった。「写真を撮るのは何故ですか」と彼が十の何故と述べた中で、「写真を撮るということは、消えていくものだからです。」という強い言葉が印象に残った。
「世界は消えていくものだから」「消えていくものへは何かすべてが潜んでいるから」「そこに或るものは、消えていく」「だから写真に撮る」
夜の店頭に檸檬があったのか、よく見ないままに私は写真を撮っていた。
檸檬かじる少年路地へ冬の旅 無音
十一月四日 [光]
十一月二日 [光]
九月二十三日 [光]
八月十六日 [光]
七月二十八日 [光]
先日箱根に一泊した部屋の窓から、緑の濃い蔦か羊歯系の植物が朝日に染まっていた。
ガラスに映った行灯と、蔦の緑をカメラで狙った。マグリットの絵画の世界のように、画面の中に朝と夜の時間が写されたような気がした。今も高速で回転する地球という星の表側と裏側は昼と夜の対比。
平成27年の今日午前8時の室温、気温30度湿度93パーセント。空気を掴んで絞れば水が滴り落ちるような蒸し暑い世界。
暑中お見舞い申し上げます
山の気温は下界より5度低い快適空間でした
8月が近ずくと戦争関連の記事やニュースが目につく。特に今年は憲法や戦争法案をめぐり国が動いている。
高校生に向けて開かれた講義をまとめた『それども、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子著
朝日出版社刊を読みはじめた。非常にわかりやすい目から鱗の何枚も落ちる思いがする。
昨日、『1945←2015』若者から若者への手紙 ころから編集部刊が届いた。
今を生きる2015年の20代の若者から、20代を1945年戦争時代に過ごした若者に当てられた手紙のやりとり、戦後70年から100年後への未来のために読まれるべき一冊。
『GHQと戦った女 澤田美喜』青木富貴子著 戦後とは何だったのか、人々の発言でよくわかる。戦後は今や、戦前の時代に入ったのかもしれない。人間とは何か深く浅く愛おしい。
自省を込めて一句浮かんだ 『戦争をいじくり回す夏が来た』無音
明治40年のこの日、湘南大磯の坂田山の滝開き、避暑客の散策地にと高さ四丈の滝と噴水を作り解放。滝は12メートルで急斜面に人工的に作られたものだろうか。
ガラスに映った行灯と、蔦の緑をカメラで狙った。マグリットの絵画の世界のように、画面の中に朝と夜の時間が写されたような気がした。今も高速で回転する地球という星の表側と裏側は昼と夜の対比。
平成27年の今日午前8時の室温、気温30度湿度93パーセント。空気を掴んで絞れば水が滴り落ちるような蒸し暑い世界。
暑中お見舞い申し上げます
山の気温は下界より5度低い快適空間でした
8月が近ずくと戦争関連の記事やニュースが目につく。特に今年は憲法や戦争法案をめぐり国が動いている。
高校生に向けて開かれた講義をまとめた『それども、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子著
朝日出版社刊を読みはじめた。非常にわかりやすい目から鱗の何枚も落ちる思いがする。
昨日、『1945←2015』若者から若者への手紙 ころから編集部刊が届いた。
今を生きる2015年の20代の若者から、20代を1945年戦争時代に過ごした若者に当てられた手紙のやりとり、戦後70年から100年後への未来のために読まれるべき一冊。
『GHQと戦った女 澤田美喜』青木富貴子著 戦後とは何だったのか、人々の発言でよくわかる。戦後は今や、戦前の時代に入ったのかもしれない。人間とは何か深く浅く愛おしい。
自省を込めて一句浮かんだ 『戦争をいじくり回す夏が来た』無音
明治40年のこの日、湘南大磯の坂田山の滝開き、避暑客の散策地にと高さ四丈の滝と噴水を作り解放。滝は12メートルで急斜面に人工的に作られたものだろうか。