残欠 [光]
先日あわび坂の話を書いた
鮑研究所という建物があった場所に鮑を埋め込んだ塀があったのだが
取り壊されて平地になっていた。
最近その場所を通ると アワビの殻の破片がいくつか落ちていた。日射しに輝く一片を戴いてかえった。大きな鮑で30センチ近くのもあったので破片も大きい。
僅か数センチの欠片だが美しい。
「残欠」という言葉が好きだ
文字通り欠けて一部が残ったもの。
一部でありカケラだからこそ美しいものがある。
骨董の壺で 完璧な姿のものを 売っていたがなかなか売れない
ある日 壺の口を欠いたら 直ぐにその壺は売れたという様な話を昔聞いた
何か足りない事に人は魅力を見いだすのだろうか
完成という事をさけて未完成という意味での日光陽明門の逆さ柱を思いだした
此の国では「よびつぎ」と云う名の大切にしてきた
器を継ぎ合わせ、不足の分は他の器の欠片を探しだし新たな器のかたちを
つくったりもする。
金継ぎという補修方法も好きなひとつだ。
話が逸れたが鮑の破片
いく層にも年輪のような薄い層が見える
鮑の年齢の測定方法は
など昔聞いた気がする。
毎年夏になると
硝子の鮑を飾る
のっているのは中国製の硝子の泡、日々の泡を盛ったように
ガラスの器によく似あう。
以前は透明なビー玉が数十個のっていた。
透 き 通 っ た アワビ の 器 に 日々 の 泡 を 載 せ て
透 明 人 間 が 口 に 運 ぶ 光 景 を 見 る
私が小学校に入った頃 我が家には鶏が飼われていた。鳥小屋があり棚の上で鳥たちは寝た。床は土で 片隅に アワビの殻が置かれていた。蛇よけるためだと後から聞いた。暗い小屋の隅で鈍く光る貝の印象が今でも残っている。数ヶ月前その時のアワビではないが、祖父が南方の島から持ち帰ったという古いアワビの殻が手元にある。百年は経っていないだろうが風化した殻の表面の表情が面白い。海の底にいた輝きが今も感じられる色の変化を楽しんで撮った。
殻の内側と外側では世界が大きく違う
残欠とは失われた時の意も 含むものだと感じた
時の残欠
い
ま
2011-05-25 13:10
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コメント(3)
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美しいですね。
日本人の独特の美的感覚がありますね。
いたるところに美は存在する。ですね。
by 青の風画 (2011-05-25 18:32)
ガラスのアワビ、涼しげですね。
by Silvermac (2011-05-25 23:13)
螺鈿にはめ込まれている貝がこういう美しい輝きを放つ時がありますね
by gillman (2011-05-28 21:00)