なつをはぐ [アート]
リビングで我が家で使用中の椅子は、飛騨の家具工房の製作で、飴色になった塗装の色が摩擦に会う背もたれあたりは、剥げかかっている。テーブルは3年程前に手作りで創った檜の4枚矧ぎの天板で白木のまま。この白木のテーブルに合わせて、椅子の塗装の皮膜を剥がしにかかる。
荒めのヤスリだとキズが深く付くので、紙ヤスリの荒いもので削り始める。
見る間に塗装前の木肌が見えてくる。根来塗りの様な下にあった素材の顕われる姿は、何か美しい。
木が喜んでいる様にも見えてくる。湯上がりの様な木肌が心地よい。
時の流れが、洗い流されて行く様な不思議な時間。白木が今の季節にも合っている。
3年間使用して、亜麻仁油だけで手入れした檜の木肌に、椅子の木肌の色が近づいていく。
椅子の素材の木はオークかブナだろうか。木の種類により生育環境により木の色も違っている事に驚く。人の肌の色も人種や個体の個性で違っているように。木を剥ぐという行為で何か、命が再生する想いを抱いた。椅子を撫ぜるように紙ヤスリをかけている行為が、何か抱擁や、身体を撫ぜる行為にも思えてくる。数年前近くの由緒ある別荘が、築百年近くかのものを、名古屋の専門業者が木を洗い出し、汚れを除いて白木の状態をよみがえらせたという話を思いだした。数千万円の費用がかかったという。
数日前、湘南平のテレビ塔に登った。相模湾と江ノ島方面がよく見えた。その時、脚元の階段のペンキが歩行者の足底の摩擦ですり減り、見事な根来塗り状態になっていた。意図的にはこの光景は創れない。何層ものペンキを津軽塗りのように研ぎだしたのは靴底達。
およそ一ヶ月前に近くの山で、アオバトの鳴声を聴いた。新緑が燃える山にアオバト達が今年も帰って来た。
ゆあがりのきはだのかおりなつはきぬ
なつをはぐあおばとなきて海も濃し
2014-05-14 13:56
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コメント(3)
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初めまして。
私も木でつくられた家具にとても
愛着を感じています。
by yoko-minato (2014-05-16 05:18)
木の椅子、もしかして高山のオークヴィレッジで購入されたのでしょうか。
by cafelamama (2014-05-19 07:51)
yoko-minatoさま
木はいいですね。家具の年輪と、それと対話しながら作られた職人さんの家具には敬意を感じます。
cafelamamaさま
オークヴィレッジ懐かしいですね。手元に本棚からA HEART OF OAK
稲本正さんの著書 昭和57年発行「緑の生活」副題を引っ張りだしてきました。新宿紀伊国屋のギャラリーで家具の展示会を開かれていた稲本さんに一度お話をうかがった事があります。我が家の家具は残念ながら、キツツキマークの飛騨の民芸家具です。トレーが二枚だけオークヴィレッジ製を使っています。
by SILENT (2014-05-19 13:50)