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1968 [人]

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東京の都心部の路地裏での昼下がりの時間だった。1968年頃の会社の昼休み、昼食の為に一人でビルの谷間を歩いていて、その路地裏にとめられた乗用車の脇を通り抜けようとしたときだった。車のドアが開くと同時に、スーツを着た一人の男が車から降りて来た。ちょっとだけ話を聞いて欲しいと、無理矢理車に押込められた。運転席にはもう一人スーツ姿の男がいた。道を聞かれるにしては強引に車に拉致する姿勢いに嫌な予感がした。話は営業で廻る最中、急に現金が足りなくなり、手持ちのブランド万年筆のセットを買って欲しいと言う話。LANVANというネービーの箱に金文字のブランド名。いくらでも手持ちの金額でいいという。ゆすりか集り(たかり)の行為だがこちらは成人式を迎えて都会生活も間もない田舎者。どうしていいかわからないが昼飯代を残して少しでも金を渡せば車から降りられる。馬鹿な判断をしたものだ。かってに車を開けて誰か人を呼べばいいのだが通行人はいない通り。もしかしてホンモノかもと馬鹿な期待で品物と数千円を渡してしまった。
会社に帰りロッカーに大事に箱をしまい、後から調べるとLANVINが本物で、LANVANは真っ赤な偽物。当時はIとAと違えていた。今より偽物としては巧妙かもしれない。胸を張って俺はLANVANって、何か哀しい思い出となった。
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それから随分経って、ある地方都市を歩いていた時だ。紙のショッピングバッグを抱えて歩く女性がいた。〇〇○ポイって横文字で書かれている。あんなブランドあったけ、洒落た店先に〇〇○フーって書いてある。何かありそうな偽のような不思議な気分の文字が町に溢れていた。本物はどれで偽物はどれ目眩がするような時があった。沢山のブランド名が氾濫していた。まるでインターネットのなかの本家ホワイトハウスの隣りは、洗濯屋ホワイトハウス、その隣りは写真屋ホワイトハウスのような存在だった。ユニクロッポイ、ユニクロフー、ユクークロ、ユニロク、ユーニクーロ、こんな調子だった。こんな調子、あれを見た時は一晩眠れなかった。本家迄が姉妹ブランドを増発した時代だった。
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最近テレビで、「私たちは何を求めて来たのか」と書かれた海の上に原発から黒煙が上がるポスターを視た。情報の本物を見分けなければ生きていく資格のない時代。豊かさとは偽物でも温かければいいではないかと思う時代なのか。本物でも冷たい存在ならいらない。私たちはそれぞれ大切なものを大事に出来る事が当たり前の時代。そんな時代は自分次第なのだろう。人様に本物を押し付けても感謝はされない。人様に偽物を売りつけて生きぬく人間は今も昔も多いと変にしみじみ思う昨今です。騙すより騙される方のが心が安泰だと思っていたが、騙す事が当然となった人間に反省はないのだろうか。
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青い空と青い海の本物ではない画像を載せながらふと思う。
最高なのは本物の空と海。
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わたしっぽい、わたしふうの海にはいつ出会えるのか
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駅員3

含蓄深いお話しを聞かせていただきました。
海の遠景がとても印象的です。
by 駅員3 (2012-07-09 16:59) 

Silvermac

車に拉致して押し売りは悪質ですね。
by Silvermac (2012-07-09 22:11) 

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