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正倉院孝 [人]

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「天皇のものさし」正倉院撥鏤尺の謎 という本を読んだ。
誰が正倉院の宝物を持ち出したのか?天平時代以来、熱いヴェールに閉ざされてきた「正倉院」、そして、知られざる美術品「撥鏤尺」(天皇のもとに厳重に管理されてきた「基準原器」)の歴史と謎に迫る、渾身のライフワーク。正倉院で何が行われていたのか。新たな発見に満ちた極上の歴史ミステリー。

由水 常雄:著
四六判 232ページ
定価:2,000円+税
ISBN978-4-89205-498-3(4-89205-498-4) C1021
奥付の初版発行年月:2006年02月 / 発売日:2006年02月上旬

目次

プロローグ
第1章 『東大寺献物帳』の謎
第2章 撥鏤尺とは何か
第3章 12枚の撥鏤尺プラスアルファ
第4章 唐代以降の尺度の変化
第5章 謎にみちた撥鏤尺の増減
第6章 撥鏤尺の長さの秘密
第7章 鎌倉時代に入った大量の象牙尺
第8章 撥鏤尺の消失
第9章 東京国立博物館にて
第10章 消失した撥鏤尺の拓本
第11章 突如出現した撥鏤尺
第12章 蜷川式胤という人物
第13章 蜷川家売立目録に正倉院尺が・・・・・・
第14章 NHKTV『歴史ドキュメント』第1回
第15章 亡失した撥鏤尺の出現
第16章 新たな撥鏤尺の衝撃的出現
エピローグ
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※以下 日経ものづくり雑貨ブログより引用

大辞泉で「はかる」を引くと,まず「ある基準をもとにして物の度合いを調べる」と出てきます。富山市科学文化センターで2005年に開催された特別展「はかる」(同館のホームページ)では,「『はかる』ことは科学の第一歩」とし,「はかることによって,物の量を数字で表せるようになり,ものごとを正確に判断し効率よく扱えるようになる」,「はかる」という行動は,科学上の偉大な発見につながることもあります」と“はかる”という行為の意味を説明。「何かに対して好奇心を抱いたら,何かを見て疑問に思ったら,『はかって』みてください。そこが科学への入り口です」と解説しています。

 撥鏤尺でいえば,税に直接に結びつきます。租庸調のうち,例えば調として布を納める。もちろんその長さは決まっていたわけで,明確な基準が必須となります。由水常雄氏は「天皇のものさし―正倉院撥鏤尺の謎」(2005年,麗澤大学出版会)の中で「尺度が異なっていると,徴税等に混乱が起こり,国家の行政が乱れ,国家の統一性が崩れる原因となるために,基準となる尺度は厳重に管理されなければならないのである」と述べています。

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神がつくった基準のモノサシで、棕櫚の葉は見事に並んでいる。
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どんな揺るぎない基準が秘められているのだろうか。
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葉先迄見事に基準でつくられた世界
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読後感想は以下の通りでした

1.著者が、何故この本を書きたくなったのか。その動機が中国で発行された度量衡に関する、中国が所有する各時代の原基なった国宝級のものさしに、正倉院の所蔵するものと類似するものが一点もなく、日本にしかない世界でも稀なものだという点。

2.正倉院を造ることになり、当時の関連した指導者が、何故総て軍人だったのかと、著者は疑問を呈するが、本の中で探求はない。〔設立の謎〕

3.正倉院の目録は、時代によって幾つか作られてきたが、その内容は、当時の価値基準で、焼き物数点他とか、大雑把なものもあり、現在の価値基準では国宝級のものも、その他となっていたりするが、時代により目録が改竄され、蔵にあったものが、関係者により持ち出された形跡もある。〔権力の濫用〕

4.誰が何を持ち出したか不明だが、最初数百のコレクションが、大仏開眼の法要などでは、国外からの寄贈品が増え、今では万を超える点数になっているという。目録の新たな更新と、情報の開示の問題が、日本では、米英などに比べ遅れていると著者は言う。〔情報開示の社会性〕

5.中国歴代で長さの尺度が異なっているという。それにより正倉院に十枚以上あるものさしの、制作年代が特定出来たという。〔基準の設定と権威〕
何故皇帝が代わると、基準を変えたのか。制服した民族が使用していた単位なのか、変えることに意味があったのか。
知人が足袋のサイズの元になった、一文銭の古銭を集めたら、直径が異なっていて、どれが基準になっていたかワカラナイトイッテイタ。

6.「ものづくり」の科学史 世界を変えた【標準革命】橋本毅彦著を読んだ。
互換性は技術者の壮絶な工夫と苦労の結晶であり、企業と権力の構想と交渉によって誕生した。アメリカで、火災の大災害の際、州により消防車のホースの型が違うことで、火災に対処できなかった事から、国内での標準化が促進されたという。神戸の震災で警察無線の県別に異なっていたものを、統一した話を思い出した。災害の広域化や、戦争のための部品の規格統一など、緊急事態に対処するため標準化が促進することを感じた。

7.国家も、企業も、人により成り立ち、完全なものはない事を今更ながらに知った。法律も権威も、基準も、人が産み出すことを。

8.明治に入り、正倉院から消えた宝物、天皇のものさしは、三大財閥の三井、住友、三菱の権威者が、欲しがり、所有もしたこと。海外への流出のドラマにも関係していたこと。ボストン美術館や、モースコレクション等。
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