SSブログ

五月十六日 [空]

私鉄沿線の電車に乗って驚いた。電車に座れて居眠りをしていて目がさめると突然車内に繋ぎの作業着を着て脚立を持った男性が乗り込んできた。次の駅まで乗っていくのだろうとぼんやり考えていたら、横列の座席の数名隣の女性客の前に脚立を広げていた。無言で網棚の手摺を片手で掴み、片手にドライバーを手にすると額面広告のあたりのビスを回し始めた。微かな埃が乗客の上に落ちるが乗客はびくりともしない。こんな光景に慣れているのだろうか。無視する態度も何か不自然だ。走行し始めた電車の中で作業員は4箇所ほどのビスを外し何かを始めた。言葉を発しない彼は、出稼ぎで海外からやってきた人なのか。車内の乗客に挨拶をして作業にかかれとマニュアルにはないのか。マニュアル以前の世界だ。数メートル先で起きている光景が何かシュールな光景に思えてくる。日常と非日常の違いは何なのか。
数十年前に、私鉄の走行する車内で、中吊り広告をあっという間に外し、新しい中吊り広告を差し込んで、電車内を手際よく交換していくプロの作業員の姿を思い出した。一車両に何枚もぶら下がる広告をあっという間に変えていく姿に、その時は拍手をしたい気分だった。
昨日の私鉄の光景とは何かが違う。電車を乗り換えJRの車内で額面広告が飛び込んできた。
16.jpg
空を飛ぶ八人、その路上の影も八人あるが何か怪しい。ワンショットのシャッターチャンスが捉えた写真なのか、合成なのかじっと観察する。遠い昔若い頃の自分も空を飛んでシャッターを切ったことがある。何故か空を飛ぶ時脚は開いてしまう。何故なのだろう。閉じた脚は空には似合わないのか。スーパーマンやアトムの脚は両脚を揃えて魚のように空を飛ぶのだが。
額面ポスターと、かっての私の空を飛ぶ一瞬のカタチは見えを切っていたのだ。
いつかこのブログで空飛ぶ彼女で有名な写真家を見つけた。
http://silentsilent.c.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_d17/silentsilent/E382B9E382AFE383AAE383BCE383B3E382B7E383A7E38383E38388EFBC882011-11-25209.40-a019d.jpg?c=a0彼女はまだ空を飛んでいるのだろうか。動画となると魔女のように自由に飛び続けることができるのだが。

昭和8年5月16日 湘南大磯上空にて、湘南号ともう一機が感謝のビラ、数万枚を散布。感謝のビラには何が印刷されていたのか。他高等飛行も見せる。人間のパイロットが機械を操り操縦し、腕を見せた時代。ドローンが飛び地上で操作する人間。時代は変わり空を飛ぶ夢は何か悲しいほど遠くなったのかもしれない。ビラが空を舞い、大きな飛行船が海の上を鯨のように飛行する時代、空はとてつもなく大きく感じられた。

nice!(18)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 18

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

五月十五日五月十七日 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。