SSブログ

天空 [物語]

R0038557.jpg
平成21年11月5日の落日
襤褸の話の続きから
田中忠三郎さんの話で 衣食住という人間にとって大切なものの要素で、何故「衣」が最初にくるのか。人間は動物のように毛皮をまとっていない、厳しい自然のなかで生きて行くのに、体温を維持する為にも衣服は最も必要なものである。食料がなくても数日は生きられる人間は、衣服がなければ生きる事が出来ない。かってこの地に生きて来た人々は決して衣類や布を粗末にしなかった。丹念に刺し綴った着物をまとい、日々を精一杯生きた。衣服は生命そのものだった。青森では「ボド」という名の寝る時に使っていた敷布がある。麻布や木綿の布を継ぎ足し使い古した着物の布を丹念に重ね何代にも渡り使われて行くと言う。出産の際に「ボド」は使用されたと言う。子供はひとりの力で誕生するのではない。父と母、それに連なる祖父母と先代があって、十代さかのぼるだけでも、ひとりの人間の中には千人以上の人達の血が流れている。ひとりの人間の誕生の影に数えきれない程の誕生と死がある。その証としてその人間の誕生を見守り、確認する為の「ボド」なのである。
「あなたは決して独りではない。このボドのように家族の絆があなたをきっと守ってくれる」
何と言う証明だろう。現在この世界で「ボド」に変わるものはあるのだろうか。
そして「ボド」という襤褸を生み出した世界とは何なのだろう。
R0038591.jpg
縄文時代と言う世界は、かなり長く続いた事が現代では判って来ている。稲作ではなく狩猟を中心に多様な手段で生活の基盤を持っていたようだ。稲作文化が技術として文化として南から北上して来たとき、縄文の文化は変容して行ったようだ。富の分配が縄文と弥生の稲作中心の中心の世界では大きく変わった。「ボド」の文化は縄文文化の遺産の要な気がしてならない。
R0038483.jpg
朝日ジャーナル復刊号での記事で思いだす事がある。最近の若者は宗教や魂に関する事に関心が高い。と 物質文明がいきずまり支えとなるものを求める傾向かとも。
衛生観念が20世紀から最も潔癖なくらいに発達した国は、ドイツ、アメリカ、日本の国々だと昔聞いた。白いタイルやステンレスの流しが普及し、風呂やトイレも磨き上げる国。
アンデスの山の人々は何ヶ月も何年も同じ衣服を着込んでいたと言う。体は清潔にしても匂いや体臭は自然に思う国。
今中年族の加齢臭や生活臭が徹底的に嫌われる 無臭世界を目指す国。
そんな無菌の国のが死臭を強く感じるのは自分だけなのだろうか。
R0037272.jpg
R0038408.jpg
デジタルの世界は音も色も触覚も制覇した。のこる世界は味覚と臭覚の世界だ。
五感が制覇された世界からは 何が始まるのだろう。
R0037256.jpg
R0038453.jpg
nice!(40)  コメント(14)  トラックバック(0) 

nice! 40

コメント 14

fuzzy

豊かな時代に物欲に満たされた後に残るものは?心の豊かさを求めるのは昔も今も基本的には変わらないと思います。今の若者は私達の時代よりさらに物欲に満たされていますが孤独性も増し、現在多様化し様々な情報が飛び交うなか、自分の方向性を見出せず訳の解らない思考・行動に行ってしまうのでしょう、要は豊かさの副作用ですね。衛生観念が進みすぎるのも同様でしょう、食べるに困窮していたらそんな事は言ってられませんからね。
by fuzzy (2009-11-06 15:07) 

marcy

二度と同じ表情がない一期一会の空。良い色ですね。
by marcy (2009-11-06 17:48) 

ぼんぼちぼちぼち

体臭も、顔形や性格のように その人間を形成する大きな一要素だと思いやす。
それを消してしまおうとするのは、矢張りどこか歪んだものを感じやすね。
尤も 現代人は 歪みで形成されているようなものでやすが。 
by ぼんぼちぼちぼち (2009-11-06 20:24) 

でじこん

nice ご訪問ありがとうございました。
by でじこん (2009-11-06 20:51) 

adelie

御訪問&Nice!ありがとうございました。
3枚目のお写真は宇宙から見た地球のようですね。
by adelie (2009-11-07 00:40) 

アヨアン・イゴカー

消臭、増毛なども、「臭わない方がもてる」「髪の毛はふさふさしていた方が好い」と言う価値観そのものがビジネスの対象になっていることが問題なのだろうと思います。内発的ではない外発的な価値観、それによって感得される落差が、「ビジネスのチャンス」と看做されるのでしょう。
この傾向がなくならない限り、意図的に作られた価値観が、古い自然発生的な価値観を圧倒し続けるでしょう。
by アヨアン・イゴカー (2009-11-07 00:42) 

SILENT

fuzzyさん
コメント有難うございます
豊かさの副作用
確かにです
得るものが多いと
失うものもあるのは当然ですね

by SILENT (2009-11-07 19:12) 

SILENT

marcyさん
本当に雲は飽きない程変化してくれますね
一期一会 好きな言葉です
by SILENT (2009-11-07 19:14) 

SILENT

ぼんぼちぼちぼちさん
現代は大きな歪みのグレートバロック時代かもしれませんね。
by SILENT (2009-11-07 19:15) 

SILENT

でじこんさん
コメントありがとうございました

by SILENT (2009-11-07 19:17) 

SILENT

adelieさん
ありがとうございます
青い地球は水の惑星の様で綺麗ですねー
三枚目確かに見ようによっては納得です
by SILENT (2009-11-07 19:19) 

SILENT

アヨアン・イゴカーさん
考えようによっては
臭いを消す世界は
エチケットから始まったんでしたね
相手に不快を与えない いい側面も評価しなくちゃと
考えてみました
世の中バランスが大事なんだとつくづく思いました
香りも無臭も適度なバランスで
心地よさが生まれる
なんでしょうね
by SILENT (2009-11-07 19:24) 

COLE

無菌の国のが死臭を強く感じる、
私も実感する毎日です だからこそ何かしなければならないですね


by COLE (2009-11-08 21:56) 

SILENT

COLEさん
何かをしなければ
何かを見つけなければ同感です
by SILENT (2009-11-17 08:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

下北半島ひなた ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。