1968

1968年代に、神奈川県横須賀から品川迄、京浜急行電鉄を利用していた。当時の電車は猛烈に混んだ。ドア付近のガラス窓は、割れて応急処置に板があてられているような時もしばしばあった。品川駅は帰宅時、ホームに溢れ人々と、整列乗車が行き渡らず戦場のようだった。ある日始発電車を待っていて車内になだれ込んだ客が二人掛けの座席に、瞬間三人が同時に座った。後から乗り込んだ客は唖然として窮屈そうな三人を見下ろす。誰もが誰かが立つだろうと思う。然し予想外に意地の張り合い三十分ほども続いた。
ある晩、酔っ払いが車内で立って吊革にぶら下がりながら、新聞を読んでいた。いや読んでいる姿勢でいたのだろう。カーブで酔っ払いが新聞を落とした。酔っ払いの前に座った人も新聞を読んでいた。酔っ払いは素早い動きで落とした新聞の代わりに、前の人の新聞を持ち上げ、網棚に放り上げた。唖然とするのは座席で新聞を読んでいた人。憮然として網棚の投げられた新聞を取りに立ち上がる。酔っ払いがすかさずその席に坐る。そんな漫画な光景があった。

ある朝、入ってきた電車に乗り込むと、一つだけ席が空いている。正確にはその席には先客がいた。羽根を拡げた幅が十五センチはありそうな白い蛾だ。私は嬉しくなってそこに行き、ポケットから二枚ティッシュを広げ、彼をつまみ窓から放した。朝日の中に回転しながら彼は飛び去った。
或る時は、何処からか猫が車内に入ってきて、気に入った駅で降りていった。彼女はそれからどうやって帰宅したのだろうか。

画像と話がうまくリンクしませんがこれもご愛嬌

ラッシュアワーの人々と　今一斉に芽を吹き始めた山の樹々の新芽達、何か似ています。強烈な生きると言うエナジーを感じるからなのでしょうか。

コメント 3

猫ちゃんの話は、宮崎アニメの耳をすませばの冒頭につながる話しですね！
by 駅員3 (2012-04-10 11:43) 

電車に纏わる面白い話ですね＾＾。
by 海を渡る (2012-04-10 20:48) 

ラッシュアワーのエピソード、おもしろかったです。
よく覚えておいでですね。
by sig (2012-04-12 18:38)