1990 [かたち]
1990年代の横浜中華街にある店で、衝撃的なものを見た。日本人の男子の身長程の鉄製の蛇の姿だった。錆色の存在が波打って天に向かい駆け上るような勢いがあった。ざわざわと胸が騒いだのを覚えている。人は蛇を見ると何故か恐怖に陥るそうだが、何故なのだろうか。鉄の頭は緑青が吹いて緑色の飛沫を上げ始めている。鉄板を波打つ姿に切り取って蛇の秘める力を奪い取った彫刻のようにも見える。否宗教的なものかもしれない。蛇を造った作者も波打つ身体に畏敬の念を抱いた筈だ。どこのアフリカの民族の誰が何の為に作った代物なのだろう。今ではあの衝撃が、この鉄製の蛇を見てもなくなったのだが、彼の呪力が落ちたのか、こちらの感受性が鈍ったのかのどちらかだろう。波打つ身体は水彩画で表現しようと筆をとると、その波打つ身体のエネルギーが手に伝わって来て心地よい。
小さな頃は巨大なアオダイショウの身体を見た。まじかで見ても怖くはなかったが、山道で足元にふっと顕われた蛇の姿には飛び上がる。この町に来ても畑や路上でアオダイショウの姿を数度見かけた。インド映画「大地の歌」で最後のシーンでインドの民家の縁の下に大蛇が消えていくシーンは印象深かった。あの波打つ身体のエネルギーが怖さの原点なのだろう。
蛇の尾の消える大地よ夏来たる
新緑へ何処よりきたりと問いし朝
2012-05-18 13:45
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コメント(6)
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わたし、駄目なんです、理由はわかりません。
見かけたら逃げます。
by 斗夢 (2012-05-18 15:59)
蛇は大の苦手ですね、何ともあの冷ややかな目で見られるとぞ~~とします。
by 馬爺 (2012-05-18 18:31)
パリの落書きにコメントしようとしたら、ブロックされていました。
???
by tree2 (2012-05-19 00:26)
「長すぎる」と一言で片づけたのはルナアルでしたっけ?
by tree2 (2012-05-19 12:22)
tree2さま
Trop long(トロ・ロン)ですか。
るなあるの、博物誌。
蛇穴を出て測りなほせし背丈かな 中原道夫
なんて話は長くなりました。
馬爺さま
あの瞬きしない眼は、カガとも呼ばれた時代があったようですね。
斗夢さま
私も何か気配をかなり前で感じて逃げます。向こうも感じて直ぐ逃げる体制に入っています。
by SILENT (2012-05-19 18:07)
パワーの象徴か、畏怖の象徴か
蛇、そっやって考えると、実に不思議な生き物です
by COLE (2012-05-19 20:24)