1010 [物語]
1010年 紫式部日記が完成した頃だという。2010年10月10日は、銭湯の日だという。1010がセントウと読めるからなのだそうだ。銭湯は今や貴重価値の時代だ。先日ある場所で、懐かしの銭湯のカランを手に入れた。プラスティックのピンクの温泉マークが刻まれたずっしりと重いカランだ。桃色のその姿から女湯で使われていたものだろうと、かってに想像している。この口から流れた大量の湯が、どれだけ多くの人々の身体を洗い流したのだろう。紫式部が使わなかったことだけは確かなのだ。
温泉地で使われて此の地に来たものだったらと、また浪漫が膨らむ。妄想は罪になるまいと。この仲間のカラン達は何処へ消えていったのだろうか。妄想好きの人達に大切にされているであろうとは思えない。
銭湯と言えば、小学校5年生の頃、幼なじみの近所の女児に連れられて、
夕方の銭湯に出かけた。大きな吹き抜けの銭湯の天井と、番台のおばさんや硝子ごしの着衣場や、洗い場にこだまする桶の音を今でもおもいだす。
女湯の奥の洗い場から、幼なじみの彼女のおばさんが、「一緒にお風呂に入りにお出で!」と呼びかけられ、ぎょっとなり、彼女を風呂屋において驚いて逃げ帰った。記憶がある。白黒テレビは風呂屋にしかない時代の話だ。数日後学校で、五年生にもなって母親と風呂に入っている子がいると、教師から話があり、これ又ギョッとしてそれ以来母親と風呂に入る事を止めた。日本は伝統的な混浴の国だった頃が羨ましいと、子供ながらに思った。でも銭湯の女湯に、呼ばれても入る勇気は今でもない。
カランを押すと、おおきくうなずくように動く様は生き物のようだ。
紅い雲や、白い雲、黒い雲をカランは流しだす。
黙々ともくもくと雲を吐くカラン
雲の姿は千変万化 風を孕むシーツの姿も雲のように軽やかだ
天から見おろす 神の眼の視線を感じる 秋
2012-10-10 12:42
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コメント(3)
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ご訪問有難うございます。
過去記事も拝見いたしました。
素晴らしい写真、懐かしい建物、懐かしい人に出会う事が出来ました。
有難うございます。
by 青い鳥 (2012-10-10 23:37)
大いに働いたであろうカラン、存在感がいいですね。
by tree2 (2012-10-13 13:54)
のんびりとしたいい時代だったんですねぇ
by COLE (2012-10-13 20:03)