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1947 [アート]

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1947年28歳で夭折した画家、小野元衛展に出かけてきた。
鎌倉は巨福呂坂の切通しに近い場所にある、神奈川県立近代美術館鎌倉別館が展示会場だった。一枚のちらしの表面の洋館を描いたその線が非常に気になっていた。ゆらめくような画面を構成するその線が、力強くまた何是かたどたどしくも見えた。かたちを構成する線の歪みが何か強烈だった。会場で神田御茶の水にあるニコライ堂をバックに写る二人の青年の一人が作者、小野元衛だった。明るい日射しの中にスーツを着た二人の姿はモダンに見えた。彼はこの附近にあった文化学院に通学し絵を学んでいたようだ。多くのニコライ堂を描いた作品があった。広角レンズか魚眼レンズで描いたような揺れて膨れ上がるような生命力に満ちた建物の印象を受ける。カジュラーホのインドの寺院のような饒舌さをも感じる。
何か鉛筆を持ち作者と一緒に描きたい気分になってくる。絵を描くことが好きで好きで堪らないひとだったのだろう。
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1943年禅月大師 藍衣と題した墨で書かれた作品は、何故か親しみがわいた。パウルクレーの若き頃の銅版画を思い出した。確かユーゲントシュティール時代の好きな作品だ。静寂と知的な貌の表情が似ていると想い後から家でクレーの画集を開き並べてみた。
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類似性は時代のせいなのか。クレーの作品は1903年乙女と題にある。
同じ時代が産み出した作家、ベン・シャーンをも連想させる線が元衛さんの作品を覆っていた。震えるようで力強い意志の線で描かれている。
下はベン・シャーン展の古いカタログから、白い汚れは後から点いたもののようだが余りにもシャーンらしい。
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彩色は何故か陶器の地肌に絵附けをするような情景が見えたのは、陶芸家楠本憲吉氏を師としたためだろうか。
赤絵や緑釉の色と構成が頭に浮かんだ。
妹の染織作家、志村ふくみさんの着物も特別出品されていた。
彼女の本は好きで数冊持っていた。その中に兄小野元衛について書かれた本が「一色一生」である。随分昔に読んだこの本で、ふくみさんの兄である画家の事は気になっていた。
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兄が亡くなる僅か前に完成した「朱の仏」に関しての話は胸を打たれる話だ。炎のような煉瓦が積み重なり紅蓮の空気が漂う建物や、仏達の世界から、見つけ出した青の世界の話は何故か安らぎの時間を感じた。
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青い世界に達した画家の世界を今少し見れたならと思ったが、妹さんの志村ふくみさんの織り込まれた着物の世界にそれは充分すぎるほど引き継がれているのを感じた。
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京浜急行金沢八景駅のホームから見た、空から入る扉。または空へと続く扉。扉迄は透明階段でどうぞ。
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コメント 2

tree2

チラシの絵、とくに好きです。
by tree2 (2012-11-12 11:46) 

ジル

こんにちは、nice!ありがとうございました。
志村ふくみさんは、「銀花」という雑誌の特集に載っているのを読みました。
お兄さんはこのような絵を描かれる画家だったのですね。
28才という年齢で普通思い浮かぶ印象よりももっと達観した眼でもって描かれている感じがします。冷たくないし、「親しみ」って言い方わかります。
ところでパウル・クレーがこんな銅版画を描いていたのも知りませんでした。
by ジル (2012-12-03 22:37) 

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