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いしぶみや [世界]

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石文のその温もりは春の声


 昔、人がまだ文字を知らなかったころ、遠くにいる恋人へ気持ちを伝えるのに石を使った、と聞いたことがある。男は、自分の気持ちにピッタリの石を探して旅人にことづける。受け取った女は、目を閉じて掌に石を包み込む。 向田邦子さんの「無口な手紙」というエッセイで、石文の話が出てくるそうです。
石文のイメージは、手紙を小石に包んで、届けたい人に投げる礫のイメージが私にはありました。
数万年数千年数百年の歳月で、風や水の流れや地中での眠りに耐えて来た石達の表情は見事な程です。
ひとつとして同じものがない。その冷たさも掌の中で少しずつ温もっていく行程が好きです。

図書館で借りた、「拝啓マッカーサー元帥様」袖井林二郎著、五十万通の日本人からの手紙に、元号につて賛否を問う手紙の件がありました。「日本有識者の連合軍に対する『ごますり』で、元号を廃止しようとしている。それは『をべっか』であると言い切る、占領下の日本人には珍しい手紙とあります。
戦後間もなくの1940年代、元号廃止論が多く出たようです。1979年には、日本の元号制度は法制化され、今日に至っている事を知りました。この本でマッカーサーに恋文を書いた多くの日本人女性の手紙を英訳した方の話も出てきます。
当時の日本人が書いた手紙が、石文であったならどんな石達が選ばれたのかと、ふと思いました。

いしぶみはむげんのかずではるへ飛ぶ

石つぶては攻撃だけでなく、歓迎にも使われたという、石の民族話を聞きます。嫁入りの行列にも石礫が投げられる風習があったそうです。その石が小さくなってライスシャワーという習慣にも繋がったという話を聴きました。穿ち過ぎでしょうか。
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はるかうみこえていしぶみあいつたえ

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タンポポの綿毛も、春を伝える手紙のようです。何かを伝える石、何かを伝える言葉。
その中味は少しだけのが効果的のようです。南極隊員の彼へ、奥様から送られた手紙の「あなた」という三文字を思いだします。石は無言なので、その伝える所は大なのでしょう。
石が語る言葉、其処いらじゅうに言葉が落ちていると小石達をみると思ってしまいます。

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いしぶみのかぜきるねいろ虹の聲

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ぼけぬよういしぶみひろい海に打つ

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はるかたる花びらかすめ石の文

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いしぶみやいくつたまれば春貰え  無音
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シルフ

おはようございます。
今日のブログは写真も内容も最高ですね。
堪能いたしました。ご馳走様。
by シルフ (2014-03-05 11:10) 

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