あまぐもの [山]
あまぐものたれこめたりししょかのやま
雨雲の垂れこめたりし初夏の山
数日前に小田原にある郊外型の百貨店を訪ねた。箱根の連山が目の前に展開する。生憎の雨模様で雨があがると、山は雲が瀧の様に流れ落ち、昇り竜の様な雲の姿もあちこちに遠望出来た。
燐寸擦るつかの間海に霧ふかし身捨つる程の祖国はありや 寺山修司
今この国はネット時代とは言え、深い霧や雲に閉ざされているのではないか。霧の中に映し出された幻影に、実際の我が身を忘れている国ではないのだろうか。雲の中にいては脚元も見えない。ましてや外の世界も。何故か山を見つめる自分と、雲の中の山にいる自分を思い浮かべてしまった。
刻々と雲の姿は山の姿を変え、突然の高さに山が出現する。
あれは双子岳、駒ヶ岳。
眼下にヤマボウシの花が海辺の海星のように漂っていた。
百貨店という店舗のかたちが砂上の楼閣のように見えた。
脇を新幹線の瞬間的な振動が通り抜ける。微かな衝撃波が耳や皮膚を襲ってたちさる。
何か一瞬の麻痺が全身を包む。
あまぐもの銀幕包む夏の昼 夢音
エスカレータのはこぶ夏の滴 むおん
滴が走る超特急に夏の雨 無音
SSという名の真夏群衆を倒す
あまぐものくるまのうずをみおろして
棕櫚の波大手開きて夏つつむ ムオン
2014-05-22 13:18
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