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六月三日 [山]

単純に、『視えるがままに描く』という行為を長時間続けていると、モチーフを視る眼の視点が少しずれて、全体が混沌とした粒子の流れに溶け込み出し、表面の世界がまったく異なった相貌を呈しはじめます。その流れをできるだけ忠実に手の運動と共鳴させるようにして線に置き換えていくと、描いた線によってモチーフを視る眼はしだいに影響を受け、次の線につながり、少しずつ輪唱のような眼と手の運動の一体感のうちに仕事が進められます。交差しないという原則によって、それぞれの線は画面上に等しい価値を与えられ、全体の同時的な運動に加わっていきます。

以上は銅版画のエングレービングという技法の解説を、門坂流さんという絵師が述べたものです。流れる線がダイナミックな光の粒子や風となってウネるように画面を構成します。心地よく繊細で激しさも含んだ世界です。絵はどこから描き始めてもいいのだはなく、光の白い部分から陰へと描き進めるのだそうです。光の頂点は紙の白です。何かハイキーな写真のような趣の世界です。白日夢のような世界に細い線が陰を描き出す。好きな世界です。そんな門坂さんの山岳の風景に、アオバトを重ねて合成したくなりました。

アオバト01.jpg

昭和2年(1927)野犬買い上げ数湘南大磯は50頭。二日間に神奈川県下で1290頭の買い上げ数。いくらで買われ、犬を捕獲する人々はどれだけいたのか。飼い犬のが捕獲されやすくその対象になったという話も聞いた。竿の先に針金を取り付けた捕獲道具に、自転車の後ろの荷台にリンゴ箱。なにかこの人に出会うと子どもの頃恐怖を感じた。その頃の街の上空にも海水を飲みにアオバトたちは飛んできていたのだろう。2015年のこの日は雨、丹沢の山の奥のブナ林で今は巣に卵を温める時期のアオバト達、雄雌は交代で海岸までやってくるのだという。雨の中を飛行するアオバトの姿は今日も見られるのだろうか。
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ジル

門坂流さん大好きです。
ソネブロのほかの方の記事で亡くなられたのを知って残念です。

by ジル (2015-06-03 21:44) 

SILENT

ジル様
昨年亡くなられたようで残念ですね オリジナルの銅版画一枚持っています
by SILENT (2015-06-05 22:22) 

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