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六月十八日 [花]


かなりの昔、110というサイズのカメラが流行った。会社の近くのカメラ屋の店頭にローライの110カメラが鎮座していた。黒い丸みを帯びたボディにオレンジのアクセントのパーツが粋だった。手のひらの中に収まるサイズは手に持つとずっしりとした金属の冷たさがあった。
給料日に思い切って、その重さを買った。110のフィルムは玩具のようなプラスティックパッケージに入って、指でつまめるほどの大きさだった。当時は皇居を一周する人々が沢山いて、会社の連中も仕事が終わると皇居前の歩道を走ることが多かった。そんな仲間に混じり、カメラをジャージーのポケットに忍ばせて10人ほどの仲間と記念撮影をした。ミノックスのフィルムに近い小さなモノクロフィルムを、自分で焼き付けたプリントの拡大画像を今も眼の中に焼き付けている。暗闇の中で小さなストロボが発光し先鋭度の高い写真が撮れていた。ストロボで浮かび上がった人物たちは、昼間会社で見る連中とは別の人々のように写っていた。
そんな当時のことを思い出しながら、ペンタックスの110カメラのレンズでアジサイの花を撮った。F2.8開放レンズの世界はデジカメのISO設定の効果もあって暗い室内でもストロボが不要だった。ローライの110はその後、小田急線の車内で網棚に乗せたまま紛失した。新宿駅で慌てて気づいた時には誰かの手の中におさまっていた。あの重みだけが今も手の中に残っている。

ajisai.jpg

昭和63年朝日新聞湘南版トップ記事から「大磯寿の松・保存決定」大正から昭和の時代、政友会総裁、日立グループの創設者である、久原房之助氏の別荘があった敷地内の、寿の松が、周辺住民の助命嘆願で、マンションを三階建てとし松を残すことにした。松は今も「寿」という漢字の姿のように幹と枝を広げ旧東海道のすぐ近くに姿をとどめている。
この町の三大松、南本町の寿の松、長者町の無縁塚の松、東小磯の稲荷松。稲荷松は一本松稲荷という地名のみ残り、その姿はない。生きる二本は黒松で、その風格と威厳を今も示してくれています。

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コメント 2

sig

こんばんは。
ローライ110、残念でしたね。フィルムは一時入手困難になったようですが、要望により復活したらしく、かえってあきらめきれませんね。
by sig (2015-06-20 19:54) 

SILENT

sigさま
復活してもコストが高く、手間もかかるので結局デジタルになりますね。でもたまにはフィルムが使える世界は必要だと思います。
by SILENT (2015-06-30 13:29) 

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