2012

前衛ダンサーの田中泯さんの本「僕はずっと裸だった」工作舎に、木の実の話が出て来る。『実を結ぶことを結果という。果実の中には種子がある。成熟が順調であれば子孫を残すことが出来る。そうか結果が出せるということは繁栄が期待できる、ということか。中略、、、
植物の実の成熟するまでの時間の何とも厳しいこと、子孫を残すことの出来る種子は完全な成熟を待たなければ空しい。結果の後の時間のが問題なのだ。その過程を人間は摘み取って食べる。人間の味覚が植物の生殖活動を寸断する。恐ろしい話だがこれも生態系の戦いなのか。人間の場合の結果とは、、、』

今年収穫した南方系の植物フェイジョワの実を毎朝２個か３個食べている。バナナか柿か林檎の賽の目にカットしたものと混ぜヨーグルトをかけて食べている。厚く皮を剥いた実のかたちが美しいので写真に撮った。
皿の上の木の実は、並べると「正面はどこ」と聞いて来た。
確かに写真の正面とはどこなのだろう。対象物に正面があるのか、それともカメラが見つめるものが総て正面となるのだろうか。
対象物を撮る時は、正面より側面から撮る方が好きだ。側面とはその側面の反対側にある関係を同時に見ていることに気がついた。
正面からの視覚は対面し、対応する関係なのだろうか。

果実の限らないが、その表面を剥ぎ取ると柔らかな中味が露出する。
卵形のフェイジョワの実は中がざらついた梨の実のような食感と、甘いゼリーのような果芯で構成されている。皮が透けて果実の中から見える下界の光景を皮からも連想出来る。

田中泯さんは、人間の身体の正面の話も書く。踊りにとっての正面と言うものも大変重要な要素なのだろう。二足歩行で立ち上がった人間は腹部や胸部という最も弱い部分を人の正面に曝すことになった。動物は自分の腹部を相手に見せた時は、相手への服従の印となる。
顔は人の正面になるのだろう。人の背中は裏にあたるのだろうか。
表と裏の間にある、人間の側面は非常に大事なものだという。
その身体の側面は、裏でも表でもなく、それがために踊りで回転する動作と、身体の側面は重要な関係を持つという。」身体論は終わらない。

ここに紙があるとき、その裏と表は何処が境界線となるのかという話をした時代が懐かしい。紙の裏側を眺めているとき、裏ではもしかして、裏側にあった文字が移動したり、見えない間は消えていたりといった思いがあった。懐疑的なのである。

果実の皮を剥いて外側の皮だけを繋ぐと、元の果実のかたちに戻ることができる。中空の果実。

身体の正面は表や、前と呼び
背中は後面や、後ろと呼ぶ。
「前に進む」とは何が待ちうける世界なのか最近不安になる。
立止まっては何故行けないのか、後退する身体とはいけないことなのか。

南方の果実凝視す雪女　SILENT

布の波前後に冬の気配あり

天空に果実の扉こじあけて

天空の眼閉じたり冬景色

コメント 4

ひと粒の種子からもこの世界の法則や宿命がひも解けるものですね。森羅万象の語る心を知れば多くの難問は解決しそうです。
by 扶侶夢 (2012-12-11 19:24) 

フェイジョア、ますます気になる果物ですね。
わが家は、季節外れのパッションフルーツが成っています。
9月に何個か食べたんですが、いまごろになってまた実がなっています。
by cafelamama (2012-12-11 20:28) 

皮に横から光が入っているアップの写真、好きです。
by tree2 (2012-12-16 00:20) 

森羅万象好きな言葉です。一枚の葉や実から世界が見える。世界が判るとしたら最高ですね。扶侶夢さま
フェイジョワの実来年収穫出来たら必ずお送りしますので楽しみにしていて下さい。cafelamamaさま
皮の光で透ける部分意識して撮りました。見つけて下さり嬉しい限りです。tree2さま
by SILENT (2012-12-17 11:00)