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みずどけい [音]

下町で車の背に映る家々の光景を見て考えた
其所から聴こえてくるものは

むかし水時計というモノを昔見た記憶がある。時は流れるという。本当に時は流れているのだろうか。
今此の瞬間しか世界には存在しない。昨日も明日という時も総ては人間の頭の中のみに存在する。
悠久の過去も、今現在の瞬間の中にしか存在しない。
時とは何なのか?普段から気になっていた。
最近「若き古代」という素敵な本を知った。日本の古代、時間という考え方は無かったという。水時計という文明の器機がやってきて、この国では時が流れ始めたという。不思議な話だ。
水時計以前の人々の時という概念は何だったのだろうか。
それは、音という存在も消えるものではなく、空間に存在するもののように考えられていたという。
鳥の声が聴こえ、その鳴声が聞こえなくなっても、その鳴声は存在していた。諸行無常の世界以前の話なのだろうか。日本の古代の原理の中で、『重ねる』という事が最も重要という。
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「若き古代」の中で素晴らしい事が描かれているようだ。『重ねる』という行為の中でレイヤーという世界を頭の中では思ってしまう。西洋的な百人のオーケストラのコンサートでは100人の奏者が必要となる。西洋では「音」もモノとして分解し、五線譜という設計図に顕わし、進化を遂げた楽器で演奏するというのが常識だが、日本の古代の演奏は一人の個人が百回それぞれの楽器で奏でたものを、重ねあわせて全体の曲にするという。西洋のモノとしての音の分解と、東洋の空間の中の音の存在。何かレイヤーで総てを統合する作業に似ている。時間を重ねるという発想が衝撃的に感じる。而も日本の楽器が目指すのは進化ではなく、限りなく逆進化の楽器が多いという。確かに三味線や、琵琶、尺八、人間の聲、限りなく不安定要素が多いものが究極に求められている。これは自然界に対立するのでなく歩み寄る姿勢だという。
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さまざまのねいろあつまり春つくる

「若き古代」の中で着目したいのが、「虚階」という言葉だ。「こかい」と呼び、「日本の伝統音楽の演奏において、『虚階』という特殊な演出。演奏家と聴衆との間にあるコンセンサスが出来ているとき、例えば同じリズムパターンを反復しているとき、その一部分を、音を出さず沈黙の状態にすることを『虚階』という。聴衆は音がないフレーズを、自分の想像力で補って次のフレーズに繋げる。」

「ただ一方的に聴かせるだけでは聴く方もただ受容するだけになる。眠くもなろう。虚階は聴くものの意識を活性化するための仕掛けである。物理的には聞こえない音を聴く、禅宗では鳴かぬ鳥の声に譬えられる観念的な演奏である。」

つまり「音の無い世界」頭の中では、音が聞こえている世界。視聴者が参加する世界。
サイレントでなく、存在する音。

雅楽で「残学」のこりがくという演奏は有名だそうである。同じ曲を3回繰り返す。一回目と二回目は前楽器がまともに合奏する。ここで聴衆は充分曲の様相を頭に入れておく。三回目は旋律楽器が徐々に脱落して拍子だけが残る。聴衆が拍子を聴きながら、自分で記憶している旋律を頭の中で拍子に合わせて演奏を楽しむ。何かレイヤーで欠如したものを作り、それを補う事のが決定的に完全なものより、力を発揮する。そんな世界を連想する。欠如が何か大事なものになる奇蹟。欠けた王の存在。

日本の古代の弘法大師が伝えた、釈迦の世界の再現は、鳥の聲、石の聲、貝殻の聲、木の聲、大地の聲等を一斉に再現すると釈迦の世界に近づけると言ったという。その聲達は釈迦の一部だからとも言う。
聲明はチベットが原点とも聞く。音と時の考え方が興味深い。

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「若き古代」は手元についていないが注文をしました。本が着く前にネットで調べたり、書評や著者像をみる事は可能な世界ですが、本が持つ存在感と実際読む事で変わる何かがあるはずです。
読前感想文として、期待するイメージを連ねています。
この本の中で書かれている「クレオール」という世界が何か希望を予感します。
今の世界は民族主義がより強まっています。それは民族というものが崩壊する予感にも通じます。
この国では家族が既に崩壊し、国も崩壊しつつあります。
それは新たな国家像や、次の家族に変わる世界を人々が求めているのだと思います。
「若き古代」というタイトルは、古代の原理という意味でつけられたもののようです。
「老いたる現代」を若き現代の視点で読みたいものと考えています。
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同じように見える海も刻々と世界を変えています
変わらぬように見える世界が安らぎを与えてくれますが
無常という言葉は総てが変わっていく世界をあらわします
変わり方は激しい場合と、ゆったりとした場合で大きく違います
海を見つめると激しい変化と雄大な流れの変化が何重にも重なって見えます
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みずどけいいらかのなみもはるをつげ


あおふかくはるしずませてみずとけい

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みずとけいかなでしいろやミモザかな

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みもざさくそのまたおくもみもざなり 

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若き王よまざるまえに春に訊く      無 音
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