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九月二十七日 [花]

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テレビでハンガリーの国境を越え、ドイツに向かう難民の人々へ食糧を頭上から投げ与えているような映像が流れているのを観た。前後の状況は判らないのだが、はっと二つのエピソードが頭の中に浮かんだ。戦後間もなく進駐軍という占領国日本を統治していた彼らがいた時代。進駐軍のいる基地で働いていた元日本帝国陸軍軍人の男性から聞いた話。基地の食堂ではハンバーグがランチの日、空飛ぶハンバーグが見られたという。それはコックがフライパンから焼きたてのハンバーグを、行列している日本人が持つ皿にほうり投げる、空飛ぶハンバーグの光景だったという。その話を聞いて自分は粋なチャップリンの映画のシーンのように思っていた。皿を持つ当事者ではなかったから。話をした元軍人は、或る日ハンバーグを皿に受け損ね、床に落としたという。彼は苦々しく床の上のものを足で踏み砕き、直ぐさま米軍将校に抗議をしたという。「食べ物を餌のように投げるな!」次の回から空飛ぶハンバーグの光景は無くなったという。

二つ目の光景は、あるアパレル会場のバザーでの話。当時の日本で大流行だった商品が格安でバザーの会場に並んだ。バザーのお客さんの目当てはそのブランドのコーナーだった。一斉に走ってきてブランド商品をつかみ、四重五重の人垣ができた。両手を挙げこっちに投げて〜と叫ぶ人々。台が軋み壊れぬかと心配。鯉に餌をやるように商品を投げてしまった。遠くの気の弱そうな客に対しあげたかった。否何か自分が偉くなったような快感で売る側に立っていた。天井からの光景は呆れた嫌悪感に満ちた光景だったのだが、不思議な優越感がその場を支配していた。

テレビの投げられる食糧をみて複雑な気持ちになった。飢えた自分なら餌であろうとそれを今口にしているかもしれない。投げる行為も否定は出来ない。ハンバーグの空飛ぶ光景は喜劇なのか悲劇なのか。


彼岸花の球根は、飢饉の際などの非常食となるよう、処理の仕方で食用となるという。その毒性の下処理の仕方など知っている人間はどれだけいるのだろうか。

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